米国基準(USGAAP)や国際会計基準(IFRS)で出てくるよ。意味は日本基準でいうリース資産なんだけど、使用権資産の方がより広い概念なんだ。
英語では使用権資産=Right-of-use-assetです。
使用権資産は日本基準を採用している会社では聞き慣れない言葉だと思います。
それは「使用権資産」が米国基準(USGAAP)や国際会計基準(IFRS)で採用されている考え方だからです。
英文会計は、米国基準、国際会計基準に準じているので今回は「使用権資産」について以下順番に解説していきます。
- 使用権資産とは
- 使用権資産のポイント
- 使用権資産に関連する会計英語
英文会計実務や米国株投資の財務分析などに役立ててください
またUSCPA試験でも重要な論点となるので、USCPA受験生もアビタスのテキストの補足としてぜひ読んでみてください
使用権資産とは
リース(lease)で借りた資産を使用できる借手(lessee)の権利(right)のこと
シンプルにまとめるとこんな感じです。
ただこれだけでは分からないと思うので、そもそもリースとは?
というところから順番に解説します。
リースとは?
リースとは、「一定期間資産を貸し借りする契約」のことです。
イメージしやすいところでいうと、マンションの賃貸などもリースに該当します。
リースには貸手(lessor)と借手(lessee)が存在します。
借手はリース資産を貸手から借りているだけなので、リース資産の所有権は貸手にあります。
ここからは借手側に立って説明していきます。
このリースですが、大きく2つに分けることができます。
- オペレーティングリース(operating lease)
レンタルのイメージ。比較的短期間のリース取引のこと - ファイナンスリース(finance lease)
実質的に借手が買ったに等しいリース取引のこと
オペレーティングリースとは?
イメージしやすいのはオペレーティングリースの方だと思います。
オフィスを借りたり、パソコン、コピー機、社用車のリースなどは基本オペレーティングリースになります。
通常オペレーティングリースで借りる資産は、リース期間が終わったらまた別の人に貸し出されます。
リース会社はいろいろな人にリース資産を貸すことで、リース資産の購入にかかったお金を回収しているんですね。
つまり、オペレーティングのそれぞれの借手は借りている「リース資産の購入金額の一部しか負担していない」ことになります。
これ覚えておいてください。
ファイナンスリースとの対比で使います。
ファイナンスリースとは?
続いてファイナンスリース。
ファイナンスリースの要件は主に以下2つです。
- 中途解約不可(non-cancellable)
リース期間中の中途解約不可、もし解約する場合は残りのリース料を一括支払いが必要 - フルペイアウト(full payout)
リース期間のリース料を合計すると、リース資産の購入金額とほぼ同じになること
さきほどファイナンスリースは「実質的に買ったに等しい」と書きましたが、これはどういうことか?
もう少し噛み砕いて書くと以下のとおり。
- 中途解約不可
リース期間中の解約が不可のため、購入した場合とほぼ同じ金額を支払うことになる
→つまり、「実質的に買ったに等しい」 - フルペイアウト
リース料を合計すると自分でリース資産を購入した場合とほぼ同じになる
→つまり、「実質的に買ったに等しい」
え、中途解約不可とフルペイアウトの要件があると、自分が買った場合とお金の負担が変わらないってことじゃん!
だからファイナンスリースは「実質的に買ったに等しい」となるんだよ
なんかスッキリ♪
どうですか?
オペレーティングリースとファイナンスリースのちがい、なんとなく分かってきましたか?
リースというものが分かれば、使用権資産の理解まであと一歩です!
使用権資産のポイント
リースの会計処理は「日本基準(JGAAP)」vs「米国基準(USGAAP)・国際会計基準(IFRS)」で考え方が異なります。
この考え方の違いがわかると、リース資産と使用権資産の違いがみえてきます。
ここからは以下2点を解説していきます。
- リース資産と使用権資産の関係
- リースの会計処理
リース資産と使用権資産の関係
リース資産とは、日本基準における「ファイナンスリース」で借りている資産を指します。
一方、使用権資産は米国基準・国際会計基準における「オペレーティングおよびファイナンスリース」で借りている資産を指します。
つまり
- リース資産(日本)
=ファイナンスリースのみ - 使用権資産(米国、国際)
=ファイナンスリース
+オペレーティングリース
ということになります。
表で整理するとこんな感じです。
なんでこんな違いが出るのかというと、そもそもリースの捉え方が日本基準と米国基準・国際会計基準で違うんです。
- 日本基準=そのリースが「実質的な資産の取得」に該当するか?
- 米国基準、国際会計基準=リースとはそもそも「資産の取得」ではなく「資産を使用する権利の取得」ではないか?
日本基準の場合、リースを「実質的な資産の取得に該当するか?」で考えます。
さきほど解説しましたが、「実質的に買ったに等しい」のはファイナンスリースのみです。
したがって日本基準ではファイナンスリースのみが「リース資産」としてBSへ計上されます。
一方、米国基準と国際会計基準ではリースは「資産を使用する権利の取得」と考えます。
リースというのは「資産を借りること」でした。
つまり全てのリースは「資産を使用する権利の取得」に該当するわけです。
その結果、米国基準と国際会計基準ではファイナンスリースだけでなく、オペレーティングリースも含めて全てのリースが「使用権資産(right-of-use-asset)」としてBSへ計上されます。
冒頭説明したように、米国基準と国際会計基準は「リース=使用権」として広く捉えているため、「使用権資産」の方が「リース資産」よりも対象が広いんだ。
リースの会計処理
初心者向けの記事のため、細かい会計処理はここでは解説しません。
ポイントだけ押さえてもらえれば十分です。
日本基準と米国基準、国際会計基準の違いは
ずばり、「オペレーティングリースをBSへ計上するかどうか」です。
- 日本基準ではオペレーティングリースはBSへ計上しない
- 一方、米国基準、国際会計基準ではオペレーティングリースはBSへ計上する
ちなみにオペレーティングリースのBSへの計上方法はファイナンスリースと同じ考え方となります。
ファイナンスリースの処理に両者違いはありません。
以下、リースの会計処理まとめ。
- ファイナンスリース
リース料総額を「リース資産」としてBSへ計上
→その後リース料の支払いごとに費用処理 - オペレーティングリース
リース料支払時に費用処理
- ファイナンスリース
リース料総額を「使用権資産」としてBSへ計上
→その後リース料の支払いごとに費用処理 - オペレーティングリース
リース料総額を「使用権資産」としてBSへ計上
→その後リース料の支払いごとに費用処理
ちなみに経理の実務上は、オペレーティングリースを「オペリ」と略します。
BSへ計上することを「オンバランス」、略して「オンバラ」を言います。
上記を合わせて、オペレーティングリースをBSへ計上することを「オペリオンバラ」と呼んでいます。
経理以外の営業や技術の人が「オペリオンバラ」というワードを使っていると、「この人会計をよく知ってるな〜」とプロっぽくみられます。笑
日本基準ではまだオペリオンバラは必要ないけど、今後基準が変わったら必要になってくるかもね。オペリオンバラはリース契約の管理が必要になるので、処理が非常に煩雑になるんだ
ぼくは今の日本基準のままがいい。面倒なのはきらいだ
使用権資産に関連する会計英語
最後に使用権資産に関連する会計英語の紹介です。
今回はリース会計で出てくる基本的な単語を中心にまとめました。
Lease agreement
[名詞] リース契約、賃貸借契約
A company has signed an office space lease agreement.
▶︎A社はオフィスの賃貸借契約を結んだ
Lessor
[名詞] 貸手
Lessee
[名詞]借手
Underlying leased asset
[名詞]リース契約の対象資産
Lease improvements
[名詞]リース物件改良費
Lease term
[名詞]リース期間
Ownership
[名詞]所有権
Lease liability
[名詞]リース負債
Lease expense
[名詞]リース費用
Lease payments
[名詞]リース料
Termination penalties
[名詞]解約違約金
以上
最後まで読んでいただきありがとうございました。
使用権資産ってなに?日本企業の決算書ではあまり見ないけど。