【イラスト図解】のれんは英語でなんていう?USCPAがわかりやすく解説

のれんは英語でなんていう?
相談者のサル

のれんは英語でなんていうの?

お絵描き会計士aki

のれん=Goodwillだよ。

ついに出ました、「のれん」です。のれん苦手な方多いですよね。

「のれん=よく分からない、難しい」というイメージを持っている方多いと思いますが、もう大丈夫!

普段から連結決算やM&Aを担当している「のれん」まみれの私が、イラスト交えて楽しく、わかりやすく解説していきます。

この記事を読んだ後には、のれんの仕組みがスッキリ理解できるようになります。

ではいってみましょう!

この記事では英文会計初心者向けに以下順番で解説していきます。

  1. のれんとは
  2. のれんのポイント
  3. のれんに関連する会計英語

英文会計実務や米国株投資の財務分析などに役立ててください。

のれんとは

のれんとは
のれん

企業買収・合併において買収価格が買収される会社の純資産を上回った金額。
Goodwill is the amount that purchase price exceeds net assets of an acquired company in mergers and acquisitions.

上記がのれんの説明です。

「この説明で分かったら苦労しないよ?」という声が聞こえてきそうですが、会計の専門書やサイトには上記のような説明が並んでますよね。

のれんは企業買収、いわゆるM&Aの場面で登場します。大半ののれんは連結財務諸表で計上されるので、経理でも連結決算をやらないと遭遇する場面が少ないです。

なので経理でもなぜM&Aでのれんが発生するのか、そもそもわかっていない人も多いんです。

これが「のれん=よく分からない、難しい」というイメージにつながっていると思います。

ここからは簡単なM&Aの事例とイラストを交えながら、のれんが発生する理由を一緒に見ていきましょう。

のれんはなぜ発生する?簡単な事例で解説

企業買収を企むイラスト

まずは以下、場面の設定を読んでください。

サルくんが企業買収を仕掛けているという設定です。

【設定】
Monky社(M社)の社長であるサルくんは事業規模拡大のため、同業他社であるGorilla社(G社)の買収の交渉中

M社 社長
サルくん

事業拡大のためにG社が欲しいんだ。
G社の純資産は1億円だから、買収価格1億円でG社を買わせてよ。

G社 社長
ゴリさん

なめとんのか!
たしかに今のG社の純資産は1億円だが、来年度以降もG社は利益を上げる。
この将来収益を買収価格に反映してもらわんと割に合わん。

なにやら買収価格で揉めてますね。みなさんはゴリさんの言っている意味が分かるでしょうか?

ゴリさんの言ってる意味が分かる=のれん発生の理由が分かる、なので重要な部分です。

順番に見ていきましょう。

M&Aにおける買収価格の決め方にはいくつかやり方がありますが、基本的には「買収する会社の事業が継続する」前提に基づいて、その会社の来年度以降の将来収益を買収価格に反映します。

売り手の立場になると分かると思いますが、「事業を売却する=その事業で将来得られる収益を手放す」ことになります。

当然売り手は売却しなければ得られたはずの収益を、買収価格に反映してほしいと考えますよね?

これがのれんが発生する背景です。以下イラストで確認してみてください。

のれんが発生する背景

買収価格に反映される将来収益はケースバイケースですが、10年分以上の将来収益が反映されることもザラにあります。

そうなるとどうか?

結果として、買収される会社の現在の純資産よりも、買収価格の方が大きくなります。

お絵描き会計士aki

今回のケースでは将来収益が10億円と試算され、これを買収価格とすることにします。

サルくん、買収価格に将来収益を含めて、再度交渉がスタート

M社 社長
サルくん

将来収益をふまえた買収価格10億円で買わせてよ。

G社 社長
ゴリさん

(将来収益もきちんと反映されとる。10億円で優雅な老後を過ごすのもアリやな・・・)
よし、それならいいだろう。交渉成立や!

こうして無事M社の社長サルくんはG社を10億円で買収し、子会社としました。

めでたし、めでたし。

では財務諸表上どのように表現されるのでしょうか?

詳しい会計処理は割愛しますが、結論として”連結”貸借対照表にのれん9億円が計上されます。

のれん(9億円)
=買収価格(10億円)ー買収された会社の純資産(1億円)

のれんの計上

参考までに、実際の連結BSでのれんがどこに計上されているか見てみましょう!

今回の事例は「アメリカの航空機メーカーであるボーイング社」です。非流動資産(Non-current assets)にのれんが計上されていますね。

連結貸借対照表におけるのれんの具体例

以下、のれんとは?のまとめです。

のれんの解説については専門書、ネットなどさまざま書かれていますが、以下3つで説明されることが大半です。
・買収価格と純資産の差額
・買収された会社の「超過収益力」
・買収された会社の「ブランド力」

どれも結論としては正しいですが、これらをただ暗記するのは良くないです。結局使えない知識になってしまいますので。

個人的にはそもそもなぜのれんが発生するのか、その背景や理由が大事であり、ここにのれんの本質が詰まっていると考えています。

今回の事例は超簡易バージョンですが、M&Aにおける買収価格の考え方とのれん発生の背景に関する本質を捉えていると思うので、ぜひこの機会にのれんの本質を理解してください!

のれんのポイント

のれんのポイントですが、のれん計上後の会計処理が「日本基準」vs「IFRS、USGAAP」で大きく異なるんです。

結論から言うと

  • 日本基準=20年以内で償却
  • IFRS、USGAAP=償却しない

となります。

日本基準とIFRS、USGAAPとののれん会計処理の違い

この違いは会社の利益に与える影響がかなり大きいです。

当然、償却を行う「日本基準」では毎年のれん償却費が計上され、利益を圧迫します。

一方、「IFRS」や「USGAAP」ではのれん償却費が計上されないので、毎年の利益は日本基準よりも多く計上されます。

相談者のサル

なんだ、じゃあ日本基準よりもIFRSやUSGAAPの方がお得じゃん!

お絵描き会計士aki

一見するとそう見えるけど、実はそうではないんだ。詳しく説明するね。

IFRSやUSGAAPでものれんを費用化するタイミングがあります。それがのれんを減損(imparement)をした場合です。

減損とは?

一言でいうと「BS上の固定資産の金額を時価まで下げること」

例えば、BSの固定資産簿価が1億円で、時価が3,000万円と評価された場合
▶︎7,000万円の減損損失を計上して、簿価を3,000万円まで切り下げる

数年分の減価償却を一気に行なったと考えるとわかりやすいですかね?

この会計処理は無形資産の記事でも扱いましたが、のれんは耐用年数が定められない無形資産の会計処理と同じになります。

結局のところIFRSやUSGAAP上の分類として「のれん=耐用年数が定められない無形資産」なんですね。

のれんの減損を行うタイミング

では、どういった場合にのれん減損を行うのか?

少し専門的な用語になってしまいますが、「減損の兆候が見えたとき」がキッカケになります。

減損の兆候例
  • 買収した子会社が赤字傾向
  • 業界や市場が縮小してきた
  • 法改正によって産業構造が大きく変化

難しく考えず「のれん減損の兆候=買収した会社の雲行きが怪しくなってきた」と覚えていただければ結構です。

この雲行きが怪しくなってきたタイミングで「減損テスト(impairment test)」というものをします。

※細かい点ですが、IFRSとUSGAAPでは減損の兆候がない場合でも、毎年1回「減損テスト」の実施が強制されます

のれん減損テスト

「買収した会社の将来CFの現在価値」が「のれんの金額」よりも少ない場合、差額をのれんの減損損失として計上。

のれんを「買収した会社の将来CFの現在価値」まで切り下げる。

文章だとなかなかシンプルに書けないですね笑。以下図解を見てください。

のれん減損の流れ

のれんの減損テストでは、現在価値の考え方が出てきます。

現在価値がわからない方は以下記事で解説していますので、参考にしてください。

現在価値とは

以上でのれんの会計処理に関する解説は終わりです。

初学者の方は日本基準は「のれんを償却する」、IFRS・USGAAPでは「のれんを償却しない」という部分だけ覚えていただければ十分です!

のれんに関連する会計英語

最後にのれんに関連する会計英語の紹介です。

海外スタッフ向けメールや英文での財務報告資料作成などにそのまま使えるように、英単語だけではなくフレーズもまとめました。

Consolidated financial statements
[名詞] 連結財務諸表

I start to prepare consolidated financial statements.
▶︎連結財務諸表の作成を始める。

Mergers and acquisitions
[名詞]企業の合併・買収

Acquiring company
[名詞] 買収企業

Acquired company
[名詞]被買収企業
The acquiring company paid consideration to the acquired company’s shareholder.
▶︎買収企業は被買収企業の株主に対価を支払った。

Impairment test
[名詞]減損テスト
The Company performed impairment tests on goodwill
▶︎当社はのれんの減損テストを行った。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。