無形資産=Intangible assetsだよ。
無形資産って聞いたことありますか?似たような単語で無形固定資産がありますが、これと何が違うのでしょうか。
この記事では英文会計初心者向けに以下順番で解説していきます。
- 無形資産とは
- 無形資産のポイント
- 無形資産に関連する会計英語
英文会計実務や米国株投資の財務分析などに役立ててください。
無形資産とは
1年を超えて(more than one year)使用される形のない資産(assets with no physical form)のこと
具体的には以下が無形資産となります。
- ソフトウェア(software)
- 特許権(patents)
- 顧客リスト(customer lists)
- 受注残(order backlog)
- 著作権(copyrights)
- 商標権(trademarks)
無形資産の中で一番出てくるのがソフトウェア。
外部からソフトウェアを買ってきたり、自社で使用するソフトウェアを自分たちで作成した場合はこの「無形資産(intangible assets)」として計上します。
話が少しそれますが、最近流行りのサブスク方式のソフトウェアについては、無形資産として計上しません。
例えば1年間分の料金の前払いをした場合は、前払費用(Prepaid expenses)として計上して、毎月費用化していきます。
- 前払いの場合
支払い時は前払費用(Prepaid expenses)で計上して毎月費用化 - 毎月払いの場合
支払い時に費用化
話を無形資産に戻します。
「無形資産と無形固定資産って何が違うの?」
という方もいると思いますが、意味は同じです。会計基準ごとに呼び方が違うだけです。
- 国際会計基準や米国基準=無形資産
- 日本基準=無形固定資産
なので、どちらも同じと覚えてしまって結構です。
のれんって無形資産に含まれるの?
ついに出ましたね、のれん。
連結財務諸表(Consolidated financial statements)やM&Aでは必ずと言っていいほど出てくるのが、この「のれん(Goodwill)」です。
のれんについてはまた別の記事で細かく解説しますが、ここではのれんとは「M&Aで買った会社の将来の見込み収益力」と考えてください。
のれんは無形資産に含まれるのか?
結論としては広い意味ではのれんは無形資産の一種ですが、貸借対照表では基本的に分けて表示されます。
例えば以下ボーイング社の貸借対照表をみてください。
のれん(Goodwill)と無形資産(Intangible assets)で分けて表示されていますね。
のれんは巨額の数字になりがちですし、買収した会社の収益力を示すのでソフトウェアなどの通常の無形資産とは性質が違うので基本分けて表示されます。
この記事ではのれん以外の無形資産に限定して解説します。
無形資産のポイント
無形資産のポイントは以下2点です。
- 耐用年数がある無形資産の会計処理
- 耐用年数が定められない無形資産の会計処理
無形資産には「耐用年数(useful life)のあるもの」と、「耐用年数が定められないもの」があります。
それぞれで会計処理が大きく変わるので、順番に解説していきます。
耐用年数がある無形資産の会計処理
大半の無形資産はこっちに該当します。
耐用年数がある無形資産(finite-lived intangible assets)の具体例は以下の通り。
- ソフトウェア(software)
- 特許権(patents)
- 顧客リスト(customer lists)
- 受注残(order backlog)
- 著作権(copyrights)
会計処理としては有形固定資産と同じです。
取得時に「無形資産」として資産計上して、それぞれの耐用年数で費用化していきます。
米国基準・国際会計基準では無形資産の耐用年数については、以下の要素を踏まえて決定するよう定められています。
- 当該無形資産の使用予定期間
- 耐用年数の上限を定めた法的な規制、契約上の条項
など
ちなみに、日本では無形固定資産の耐用年数については、税務上の法定耐用年数を使用するのが一般的です。
以下簡単な具体例で見ていきましょう。
具体例:外部のシステム会社に5億円で自社システムを開発してもらった。耐用年数は5年と見積もられた。
- システム取得時に無形資産5億円をBSに計上
- その後、減価償却により毎年1億円を費用としてPLに計上
英文会計上大事なポイントですが、有形固定資産の減価償却は英語で「depreciation」と言いますが、無形資産の減価償却は「amortization」と言います。
日本語ではどちらも減価償却ですが、英語では別々の単語になるのでこの使い分けは覚えてください。
日本でも無形固定資産については「減価償却」ではなく、「償却」と言うことが多いよ。
耐用年数が定められない無形資産の会計処理
耐用年数が定められない無形資産(indefinite-lived intangible assets)は以下のようなものが該当します。
- 商標権(trademarks)
- 商号(trade names)
商標権とは例えば、「YouTube」などサービスの名称・ロゴや、「Google」などの企業ロゴなどのことです。
商号とは「〇〇株式会社」などの「会社名」を指します。
日本では保護期間が商標権は10年ごと更新、商号は無期限。
商標権は10年ごと更新すれば何回でも延長できるため、実質無期限なんですね。
ではこの無期限の無形資産はどのように会計処理をするのでしょうか。
資産計上のところまでは先ほどと同じ。
無形資産の取得にかかった支出を資産として計上します。
例えば企業ロゴのデザイン料などですね。デザイン料は商標権の取得価額に含まれ、無形資産として計上されます。
違うのはここから。
商標権の耐用年数は無期限のため、耐用年数に応じた減価償却ができません。
ではどうするか?
減価償却は行わずに、その無形資産の価値が低下したタイミングで減損(imparement)を行うことになります。
減損とは?
「減損」とは一言でいうと「BS上の固定資産の金額を時価まで下げること」です。
例えば、BS上1億円で計上されているお菓子の製造設備があって、そのお菓子の製造を中止したとします。
その設備は中古市場で7,000万円で取引されていました。
この場合の設備の時価は7,000万円となるため、簿価1億円から時価の7,000万円まで金額を下げた。
これが減損です。これにより3,000万円の損失が一度に出ます。
数年分の減価償却を一気に行なったと考えるとわかりやすいですかね?
乱暴な解説ですが、これが「減損」のザックリとした考え方です。
無形資産の減損を行うタイミング
話を元に戻します。
耐用年数が定められない無形資産は、減損を行なった場合にのみ費用化されます。
ではどういった場合に減損を行うのか?
資産の価値が低下した場合って、どういう場合でしょうか。
漠然とした答えになってしまいますが、無形資産の減損のタイミングは以下のような事象が発生した場合です。
- 会社が赤字傾向になってきた
- 業界や市場が縮小してきた
- 法改正によって産業構造が大きく変化した
どうですか?ザックリしているでしょ笑
IFRSやUSGAAPの基準書には上記のようなことが書かれているんです。
感覚としては、無形資産の減損のタイミングは
「あれ、なんだか今後会社の業績悪そうだけど大丈夫か?」
と思ったらと考えてください。
そのタイミングで無形資産の時価を測定して、簿価よりも時価が低い場合は時価まで減損していく。
時価の測定方法はいくつかやり方がありますが、こちらはまた別の記事で紹介します。
ここでは「耐用年数が定められない無形資産」は「減損により費用化」という点だけ覚えてもらえれば結構です。
無形資産に関連する会計英語
最後に無形資産に関連する会計英語の紹介です。
海外スタッフ向けメールや英文での財務報告資料作成などにそのまま使えるように、英単語だけではなくフレーズもまとめました。
finite
[形容詞] 有限の
Finite-lived intangible assets
▶︎耐用年数がある無形資産
indefinite
[形容詞]不明確な
Indefinite-lived intangible assets
▶︎耐用年数が定められない無形資産
amortize
[動詞] (無形資産を)償却する
Intangible assets with finite useful lives are amortized during their useful lives.
▶︎耐用年数がある無形資産は耐用年数の期間で償却される
impairment loss
[名詞]減損損失
The Company recorded impairment loss on intangible assets.
▶︎当社は無形資産の減損損失を計上した
fair value
[名詞]公正価値(時価)
以上
最後まで読んでいただきありがとうございました。
無形資産は英語でなんていうの?