契約資産=contract assetだよ。
この記事では英文会計初心者向けに以下を解説していきます。
- 契約資産とは
- 契約資産のワンポイント補足
- 実務で使える契約資産に関連する会計英語
英文会計実務や米国株投資の財務分析などに役立ててください
契約資産とは
売り手は履行義務の一部を充足して(sellers partially satisfy their obligations)、
売上を計上しているが(record sales revenue)、
対価を受け取る権利・条件が満たされていないもの(rights and conditions to receive consideration have not been met)
うーん、正確に書くとじつにわかりづらい笑
ひとことで言うと、未請求の売掛金(unbilled receivable)のことです。
国際会計基準(IFRS)、米国会計基準(USGAAP)では前から採用されていた考えですが
日本では2021年度から適用された新収益認識基準(new revenue recognition accounting standard)で、この契約資産という考え方が採用されました。
契約資産の具体例を教えてよ。
例えば、売り手と買い手は以下の契約をしたと仮定します。
契約:商品A(100万円)と商品B(200万円)の販売
支払条件:2つの商品を引き渡した翌月支払
まず商品Bの入荷が遅れたため、まずは商品Aのみ引き渡しました。
このとき売り手は商品A(100万円)を引き渡しているので、100万円の売上を計上しますが、
まだ支払の条件を満たしていないので、売上の相手勘定は売掛金ではなく、契約資産となります。
仕訳は以下となります。
(借方) 契約資産100 / (貸方) 売上100
※売掛金ではなく、契約資産とする
その後、商品B(200万円)を引き渡したときに支払条件が満たされるため、売り手は買い手に請求書を送ります。
結果として以下2つを認識します。
- 商品Bの売上の計上
- 商品Aの契約資産を売掛金へ振替
以下の仕訳が切られます。
(借方) 売掛金200 / (貸方) 売上200
(借方) 売掛金100 / (貸方) 契約資産100
まとめると以下のとおりです。
- 未請求の債権
▶︎契約資産(contract asset)としてBS計上 - 請求済の債権
▶︎売掛金(accounts receivable)としてBS計上
別の角度から見ると以下とも言えます。
- 契約資産
▶︎対価の受け取りが条件つき(conditional)
(条件を満たさないと対価を受け取れない) - 売掛金
▶︎対価の受け取りが無条件(unconditional)
(時の経過のみ、あとは待つだけ)
昔から思ってますが、契約資産って名前がほんと良くない。
勘定科目名から内容がイメージがまったくできないですよね?
個人的には未請求売掛金という名前の方が断然わかりやすいと思ってます。
なぜなら、
請求できていない
=対価を受け取る条件を満たしていない
=契約資産
ということになりますからね。
契約資産なんてむずかしい言葉はきらいだ。
また売掛金については別の記事で解説していますので、契約資産とのちがいを確認してみてください。
契約資産のワンポイント補足
先ほど簡単な具体例で契約資産のイメージを説明しましたが
実務上、契約資産として最もよく出てくるのが、建設工事やソフトウエア、造船などの売上を進行基準で計上している場合です。
進行基準による契約資産
進行基準(percentage of completion method)とは、発生原価に応じて進捗率を算出し、その進捗率に応じて売上を計上する方法です。
この進行基準で計上される売上ですが、実際にこの段階ではまだお客さんに請求書を出していないものが大半です。
例えば建設工事の場合、お客さんに請求書を出すタイミングは出来高払い(ある時点での工事進捗に応じて代金を分割で払う方法)や完工時など、事前に契約で決まっているんだ。
なので仮に支払条件が[完工時一括払い]で、かつ[進行基準]で売上を計上している場合、
引き渡しをするまでずっと契約資産の状態となります。
以下の仕訳はイメージです。
(借方) 契約資産100 / (貸方) 売上100
※請求前は契約資産とする
(借方) 売掛金100 / (貸方) 契約資産100
※完工時に請求可能になるため、売掛金とする
実務では一旦すべて売掛金として計上した上で、未請求の金額を集計してまとめて(借方)契約資産/(貸方)売掛金の修正仕訳を切っているよ。
国際会計基準へのコンバージェンス
この未請求の売掛金を契約資産として計上するルールはもともと国際会計基準(IFRS)によるものですが、
日本の会計基準を国際会計基準に近づける、いわゆるコンバージェンス※によって
2021年度から日本の会計基準でも採用されることになりました。
※コンバージェンス=国際的に会計基準の差をなくすこと
日本企業でも海外投資家へのアピールのため国際会計基準(IFRS)での決算を行う会社が少しづつ増えてきましたね。
ちなみに私の所属している会社では、数年前から国際会計基準(IFRS)を採用しており、
また進行基準で売上計上している案件が多数あるため、昔からこの契約資産は出てきていました。はじめは「契約資産ってなに??」となったのを覚えています。
実務で使える契約資産に関連する会計英語
最後に契約資産に関連する会計英語の紹介です。
海外スタッフ向けメールや英文での財務報告資料作成などにそのまま使えるように
英単語だけではなく、フレーズも入れてあります。
reclassify(transfer) A to B
[動詞] AをBへ振り替える
例)please reclassify the contract asset to accounts receivable after sending the invoice.
▶︎請求書送付後に契約資産を売掛金に振り替えてください。
reclassifying journal entry
[名詞] 振替仕訳
unbilled receivable
[名詞] 未請求売掛金
receive consideration
[動詞] 対価を受け取る
satisfy performance obligation
[動詞] 履行義務を充足する
percentage of completion method
[名詞] 進行基準
例)use(apply/adopt) percentage of completion method for this project to recognize revenue
▶︎このプロジェクトの収益認識は進行基準を使用する
conditional
[形容詞] 条件付き
例)contract assets are conditional receivables.
▶︎契約資産は条件つきの債権である
unconditional
[形容詞] 無条件の
例)accounts receivables are unconditional receivables.
▶︎売掛金は無条件の債権である
以上
最後まで読んでいただきありがとございました。
契約資産は英語でなんていうの?