聞きなれない言葉だよね。ただファイナンスでは非常に重要な考え方なんだ。イラストでわかりやすく解説するよ。
現在価値。ふだんの生活で出てこない言葉です。
私も最初はなんのこっちゃ?でした。
結論からいうとお金の現在価値とは以下のとおりです。
ある利回り(複利)により生じる、お金の将来価値を現時点の価値に戻したもの
つまり現在価値を計算するには以下2つが必要なのです。
- 将来価値
- 利回り
現在価値を理解するには、まずお金の将来価値というものを知る必要があります。
将来価値→現在価値という順番があるんです。
順番どおりやればカンタン、簡単。
まず将来価値について以下、かんたんな例で考えてみましょう。
お金の将来価値:100万円の1年後の価値は?
いきなりですが、問題です。
100×1.01=101で出ますね。
結論としては、
101万円=100万円の1年後の将来価値
となります。
ここまではいいですよね!?
お金の将来価値:100万円の2年後の価値は?
では、次の問題です。
100万円の2年後の将来価値はいくらですか?
できましたか?
そうです、複利の計算ですね。答えは約102万円ですね。
複利の計算についての解説は割愛しますが、要は1年後に獲得した101万円を再投資したということです。
この複利の考え方が、将来価値のキモです。
3年後、4年後も同じ考え方で将来価値を計算することができます。
ある利回り(複利)により生じる、将来のある時点でのお金の価値
例:利回り1%|100万円の1年後の将来価値=101万円
将来価値はわかったよ。利回りがわかれば計算できるね。
この将来価値の計算の仕組みを頭にいれておいてね。
お金の現在価値:1年後101万円の現在価値は?
続いてメインディッシュの現在価値についてです。
結論から先にいうと、現在価値は将来価値と逆の考え方をします。
よくわからないよ、もったいぶらずに早く教えてよ。
大丈夫、あとからかならず意味がわかるよ。
またまたいきなりですが、問題です。
101万円÷1.01=100万円で出ますね。
結論としては、
100万円=1年後の101万円の現在価値
ちょっと待ってください。
あれ?似たような問題をやってませんか?
そうなんです。将来価値の計算のまさに逆をしているだけなんです。
お金の現在価値:2年後102万円の現在価値は?
では同じ利回り1%の条件で、2年後の将来価値102万円の現在価値はいくらですか?
2年後の将来価値102万円の現在価値:102.01÷1.01÷1.01=100
答えは100万円ですね。
わかったような、わからないような。。。でもやっぱりわからない。
現在価値の計算方法
下のイラストをみてください。
ようは以下2つがあってはじめて、現在価値が計算できるのです。
- 将来価値
- 利回り
将来価値を利回りを使って現時点の価値に戻したもの。
これが現在価値です。
冒頭に現在価値には順番があると書きましたが、これが理由になります。
ある利回り(複利)により生じる、お金の将来価値を現時点の価値に戻したもの
この現在価値を計算する際に使う利回りのことを、会計やファイナンスでは割引率といいます。
割引率というワードは会計やファイナンスの世界ではよく出てくるよ。知ってて損はない言葉だね。
利回りと割引率の関係についてもう少しみてみましょう。
利回りと割引率の関係
結論としては利回りと割引率はコインの裏表の関係にあります。
同じ意味なのですが、使用する状況で呼び方が異なるだけです。
実務上は上記のように考えて問題ないです。
将来価値から利回りの分だけ割り引いて現在価値を出すから、割引率というんだね。
ではここまでの前提を使って、将来キャッシュフローの現在価値を求めてみましょう。
将来キャッシュフローの現在価値の求め方
計算方法は以下のとおりです。
1年目よりも2年目、2年目よりも3年目と遠い将来にいけばいくほど、たくさん割り引かれてしまうということになります。
なので、現在価値を最大化するには、なるべく早めのリターンが必要になります。
将来時点におけるキャッシュフローをそれぞれ現在価値に戻して合算
例:割引率6%|リターンは1年後30、2年後50、3年後40の場合
■1年後30の現在価値
→28.30(30÷1.06)
■2年後50の現在価値
→44.50(30÷1.06÷1.06)
■3年後40の現在価値
→33.58(30÷1.06÷1.06÷1.06)
キャッシュフローの現在価値106.39
現在価値の計算で使う割引率
現在価値の計算方法はわかったけど割引率はなにを使えばいいの?
とてもいい質問だね。割引率の設定は上級ファイナンス論点だから、ここでは少しだけ説明するよ。
結論から言うと、現在価値で使う割引率は以下のとおりです。
現在価値の計算で使う割引率
=計算対象のキャッシュフローに期待する利回り
したがって、計算対象と状況によって使用する割引率は異なります。
ここではザックリ割引率というものの考え方を整理します。
おさらいになりますが、割引率とはなんでしたか?
将来価値を現在価値に戻すための利回りのことでしたね。
そうです、要は利回りなんです。
と考えればいいのです。
キャッシュフローに期待する利回りはおおむね以下の考えで構成されています。
無リスク金利(10年物国債)
+
リスクを加味した上乗せ(この部分は案件ごと変動)
ただ、正直この式だけみてもよくわからないと思います。
この論点はけっこう奥が深いのでまた別の記事で解説しますが
使用する割引率は例えば以下のとおりです。
- 銀行預金であれば銀行の預金利率
- 社債であれば実行利子率
- M&Aなどの企業価値であればWACC
現在価値が議論になる場合の多くは企業価値ですかね。
企業価値算定の際に使う割引率といえば、WACCです。
このWACCについてもまた別の記事で解説しますが
日本企業のWACC平均は5-7%といわれています。
ちなみにわたしが担当した国内企業のM&A案件でも割引率はほとんどが6%を使ってました。
なので企業価値計算における割引率に限っていえばとりあえず6%決めうちでも、問題ないと思います。
よくわからないけど割引率は6%で設定してみるよ。
なんでもかんでも6%じゃダメだよ。割引率を使う状況をよく考えてね。
まとめ
おつかれさまでした。以下まとめです。
ある利回り(複利)により生じる、将来のある時点でのお金の価値
例:利回り1%|100万円の1年後の将来価値=101万円
ある利回り(複利)により生じる、お金の将来価値を現時点の価値に戻したもの
将来時点におけるキャッシュフローをそれぞれ現在価値に戻して合算
例:割引率6%|リターンは1年後30、2年後50、3年後40の場合
1年後30の現在価値
→28.30(30÷1.06)
2年後50の現在価値
→44.50(30÷1.06÷1.06)
3年後40の現在価値
→33.58(30÷1.06÷1.06÷1.06)
キャッシュフローの現在価値106.39
どうでしたか?けっこう難しいですよね。
ただこの現在価値という考え方、ファイナンスでは超重要です。
株価も基本はこの現在価値という考えにもとづいています。
現在価値を知らないというのはファイナンスの世界では
地図も持たずに知らない国を旅するようなものです。
それほどに現在価値という考えは大事です。
この機会にぜひマスターしてみてください。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
現在価値ってなに??